熟成と真空パック

牛肉の熟成について、
最近、熟成という言葉をよく耳にしますが、
人それぞれの考え方があると思います。
まずは牛肉の熟成について説明させて頂きます。

まだ市場なども無い時代、
博労と言われる人(牛馬の売買あるいはその仲介を業とする人)
が農家に行き、若い牛と働く事のできなくなった
農耕牛を交換していました。
働く事のできなくなった農耕牛をと畜し、
肉屋さんが軟らかくなるまで冷蔵庫に提げ、
「熟成(ドライエイジング)」をかけ食肉として
販売していたことが起源かと思います。

その頃の牛は5~10年間、畜されていたのではないかと考えます。
(今のように登録書がないので正確ではありませんが)

しかし近年、牛は肉専用種となり、昔のように
農耕牛を食べることは殆どありません。
肉専用種となったおかげで育て方、餌などの
改良され霜降りで軟らかい肉になりました。

このような流れが、今現在までの、食用牛肉の歩みです。
この歩みでお分かりになると思いますが
「熟成」という技術は歴史に逆行している事と言えると思います。

食用として進化した牛肉を何ヶ月も骨付きで置き、
回りを削り一種独特の発酵臭をさせて食べる必要性。

わざわざ雑菌を付け、自然対流ではなく、
ファン対流の開け閉めの激しい冷蔵庫の中で
白カビではなく青カビを生やし、骨付きでぶらげておく必要性。

開け閉めの激しい冷蔵庫、自然対流ではなく、
ファン対流で白カビではなく青カビを生やす必要性。

昔の肉屋さんにあったパイプに霜を付ける
自然対流(風を起こさない)冷蔵庫ならわかりますが、
最近流行の「熟成」スタイルに、これらの必要性があるかどうかは、ちょっと疑問です。

確かに、「うま味」とされるアミノ酸、イノシン酸は
死後より日にちがたったほうが増えますが、
きっちりとした対応が必要になります。

牛肉の細胞の中でこんなことが起こっています。

【1】
アミノ酸がたんぱく質が時間経過により旨味成分に変わります。

【2】
生体のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(以下ATP)が
時間経過と共に分解、生成されイノシン酸となり、
旨味成分に変わります。

【3】
筋肉中の酸素を運搬するたんぱく質ミオグロビンが、
時間経過により酸素と結びつき酸化してしまい
メトミオグロビンに変わります。

そして時間の経過と共に
暗赤色→鮮やかな赤色→灰褐色
と変化していきます。

この問題に対して、加藤牛肉店では真空パックで肉を保存しています。

ATPは空気を遮断することにより旨味成分のイノシン酸が増える為、
肉のミオグロビンの鮮度を保ちながら
ATPのイノシン酸を増やすことが目的であれば、
真空パックが最適な保存方法であると考えているからです。
ただ時間経過により、美味しい牛
(赤身の甘味や脂の良い香りはなくなってしまいます)
科学的に旨味が増えても人間の舌で解るかどうかだと思います。

先日、熟成を売りにしている生産者と話をしましたが、
加藤は、「熟成をすると元々美味しい牛が持っている肉の甘みは
日にちが経つと無くなってしまう。」という意見をしました。
その話をした熟成を売りにしている生産者も
「加藤さんが言うように牛の甘みは無くなりますが旨味は増える」
と言っておりました。

しかし、やはり疑問におもうのです。
旨味は果たして人間の舌で判るものでしょうか?

計測機器などで測れば判るのかもしれませんが
熟成した肉で「甘み」や「旨味」を加藤は感じた事は有りません。

「甘い」「辛い」「しょぱい」「苦い」などは
「濃い」「薄い」などの度合いで判断出来ますが
「旨味」に関してはこのような度合いで味覚があるのでしょうか。

牛はその土地で飲んでいる水の成分で肉の色が決まり、
作り手の餌の配合で味が決まります。

本当に美味い牛は赤身が甘く、
焼いたときに上がる湯気の香りがいい脂です。

当店で仕入れる美味しい牛は、産地だけではなく
生産者、メス、血統、月齢、体系にこだわり
甘みや香りも感じられるよう、最高の技術を注いで
自信を持って加工・販売させて頂いてます。
また、仕入れた肉の全ては骨を抜いてから20日以内で
売り切るようにしています。